公開鍵は、暗号化されたデータの復号やデジタル署名の検証に用いられる鍵のことです。公開鍵暗号方式において、ペアとなる秘密鍵とともに利用されます。
公開鍵暗号方式の基礎
公開鍵暗号方式は、暗号化と復号に異なる鍵を使用する暗号方式です。この方式では、公開鍵 (Public Key) と秘密鍵 (Private Key) のペアが生成されます。公開鍵は広く一般に公開され、秘密鍵は鍵の所有者のみが厳重に管理します。
- 暗号化: データを暗号化する際は、公開鍵を使用します。公開鍵で暗号化されたデータは、対応する秘密鍵でしか復号できません。
- デジタル署名: データが正当な送信者からのものであることを証明するために、デジタル署名が利用されます。送信者は秘密鍵でデータを署名し、受信者は公開鍵でその署名を検証します。これにより、データの改ざん検知と送信者の認証が可能になります。
公開鍵の役割と利用例
公開鍵は、主に以下の2つの役割を果たします。
1. データの暗号化
通信相手に安全に情報を送信したい場合、まず相手の公開鍵を入手します。その公開鍵を使ってメッセージを暗号化し、相手に送信します。暗号化されたメッセージは、公開鍵の持ち主である相手が自身の秘密鍵を使用することで初めて復号できます。これにより、盗聴者から情報が保護されます。
例: アリスがボブに秘密のメッセージを送りたい場合、アリスはボブの公開鍵を使ってメッセージを暗号化します。ボブは自分の秘密鍵を使ってメッセージを復号し、内容を読み取ります。
2. デジタル署名の検証
デジタル署名は、データの完全性と送信者の身元を保証する技術です。送信者は、自身の秘密鍵を用いてデータにデジタル署名を付与します。受信者は、送信者の公開鍵を用いてそのデジタル署名を検証します。署名が正しく検証されれば、データが改ざんされていないこと、そして署名者が秘密鍵の正当な所有者であることが確認できます。
例: ソフトウェアのダウンロードサイトで、提供されているファイルが正規のものであることを確認したい場合、提供者が添付しているデジタル署名をその提供者の公開鍵で検証します。これにより、ダウンロードしたファイルが途中で改ざんされていないこと、および提供元が正しいことを確認できます。
公開鍵の安全性
公開鍵暗号方式の安全性は、公開鍵から秘密鍵を導き出すことが計算上非常に困難であるという原理に基づいています。これは、大きな素数の積を素因数分解する問題の困難性(RSA暗号の場合)や、離散対数問題の困難性(ElGamal暗号や楕円曲線暗号の場合)などに依存します。
例えば、RSA暗号では、2つの非常に大きな素数 p と q を用いて公開鍵と秘密鍵を生成します。公開鍵にはこれらの積 n=p×q が含まれますが、この n から元の素数 p と q を見つけ出すことが極めて困難であるため、秘密鍵を推測することが難しいとされています。
公開鍵は、インターネット上での安全な通信や取引において不可欠な要素です。データの機密性を保つ暗号化、およびデータの完全性と送信者の真正性を保証するデジタル署名という二つの重要な機能を実現するために、秘密鍵とペアで利用されます。これにより、私たちのオンライン活動はより安全に行うことができます。